京都大学・21世紀COE・特別講演会
講演者:木下 康仁 先生
(立教大学社会学部教授・同学部長)
演 題:他者の老い−エイジングとケアの文化生成試論
日 時:8月3日(水)17:00〜18:30
場 所:京都大学百周年時計台記念館・国際交流ホールT
(〒606-8501
京都市左京区吉田本町 Tel:075-753-3092 バス:京大正門前下車徒歩数分)
http://www.kyoto-u.ac.jp/access/kmap/map1r.htm
講演要旨:老い(エイジング)とはその人に帰属する現象でありながらその人自身では完結できず、それゆえに個人の問題であると同時に他者との関係的問題でもある。
元気な段階から最終的には死に至るまで、そして死を含んだものとしての老いの自然的なプロセスは、高齢社会において、社会的に分断されて読みとられてきたのではないか。一方には、老年期を生きる近代的個人としての高齢者像がおかれ、社会参加や生き甲斐の文脈で語られている。その対極にあるのが老衰者像で、これは老年末期の高齢者像に重なるが、他者によるケアに身を委ねなければならない高齢者で、医療や福祉、介護の対象として議論される。
しかしこのように二つに大きく分断されることによって、老いの自然的プロセスをトータルに理解することが難しくなり、高齢者を社会的に不安定な存在にしている。
人口の高齢化は近代産業社会の偉大な恩恵なのだが、その逆説は老いの自然的プロセスの分断であり、その非連続性をもう一度連続したものに回復する作業が必要なのではないか。この意味で、老いはわれわれにとって新たに発見されるべきものとなったと言えよう。しかもこれは、老いを生きる個人の問題としてではなく、老いの共同的問題の位相における課題であり、したがって、文化の問題である。
講演者紹介:木下康仁(きのしたやすひと)先生は、立教大学社会学部社会学科ご卒業後、University
of California,
San FranciscoでPh.D.を取得されています。ご専門はエイジングとケアの社会学、社会老年学、福祉社会論、医療社会学、質的研究方法論と実に幅広く、特に修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの第一人者として、精力的にご活躍されております。先生の代表的なご著書としては、以下を始め、多数ございます。
『老人ケアの人間学』医学書院,1993
『ケアと老いの祝福』勁草書房,1997
『グラウンデッド・セオリー・アプローチ:質的実証研究の再生』弘文堂,1999
『グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践:質的研究への誘い』弘文堂,
2003
企画者:やまだようこ・遠藤利彦(京都大学大学院教育学研究科)
主催:21世紀COE京都大学心理学連合
共催:京都大学教育学研究科発達教育研究室
科学研究費プロジェクト フィールドの語りをとらえる質的心理学の研究法と教育法
問い合わせ:develop@www.educ.kyoto-u.ac.jp
どなたでもご参加いただけます。直接会場にお越しください。参加費無料です。