No.421-2(2007/3/29)
Effects of the menstrual cycle on looking preferences for faces in female rhesus monkeys.
(メスのアカゲザルにおける顔の注視選好への排卵周期の効果)
Lacreuse A, Martin-Malivel J, Lange HS & Herndon JG.(2007)
Animal Cognition ,10,105-115.排卵周期における卵巣ホルモンの変動は霊長類において様々な社会的、認知的行動に影響を与える。例えばエストロゲンの水準が高い期間に、メスのアカゲザルはオスに対しては高い興味を示し、他のメスとは敵対的なやりとりを行う。本研究ではエストロゲン水準が高い期間にはメスのオスへの選好が顔の知覚のレベルにおいても示されるのではないかという仮説を立てた。我々は4個体のメスにアカゲザル、チンパンジー、ヒトのオスメスの中性の肖像を用いた二種類の顔の課題を課した。視覚選好課題(visual preference task: VP)においてはサルは顔の画像を見るためにボタンを押さなければならなかった。ボタンが押されている間は画像はスクリーンに呈示されたままで、ボタンを押していた持続時間は顔刺激に対するサルの注視時間の指標とされた。顔遅延認識スパン課題(Face-Delayed Recognition Span Test: Face-DRST)においては系列的に顔が呈示され増えていく中でサルが新奇な顔を押すと報酬が与えられた。1 回の排卵周期の期間サルは週5回テストされた。エストラジオールとプロスタグランジンを分析するために1日おきに血液が採集された。4 個体中2 個体がテストの時期に周期を示した。おそらく床効果のために顔遅延認識スパン課題においては周期の影響は見られなかった。しかしながら視覚選好課題においては周期の見られた2個体は排卵前後の期間に同種他個体のメスよりもオスをより長く見た。そのような効果はヒトとチンパンジーの顔に対しては見られず、周期のない被験体にも見られなかった。これらのデータは卵巣ホルモンがメスの特定の顔に対する選好に影響することを示唆する。周期内の排卵前後の期間にオスの顔に対する選好が高まるのかもしれない。受精の可能性が高い時期に繁殖に関連する重要な刺激に対して興味が高まると、アカゲザルの社会的、性的行動を導くのに役立つのかもしれない。
発表者:森本