No.429-2(2007/5/31)

Why do female bank voles, Clethrionomys glareolus, mate multiply?

(なぜヨーロッパヤチネズミ(Clethrionomys glareolus)のメスは、多回交尾を行うか?)

Klemme I, Eccard JA & Ylonen H (2007)
Animal Behaviour, 73: 623-628.

多くの種のメスは活発に単独もしくは複数のオスと多回交尾を行うが、この行動の適応的な作用はしばしば不明瞭である。我々は小型哺乳類(ヨーロッパヤチネズミ)で実験を行い、メスの短期繁殖の成功(妊娠率、子供の数と初期の生後生存率)における多回交尾の考えうる利益を調べた。そのような利益は、直接的・間接的(遺伝による利益)にメスの適応性に影響を与えるかもしれない。我々はメスを3つの条件に割り当てた。単独交尾条件ではメスは単独のオスと1回だけ交尾を行い、2つの多回交尾条件では、メスが単独のオスと2回、もしくは2頭の異なるオスと1回ずつ交尾を行った。2回交尾したメスと比較して、1回しか交尾していないメスの妊娠率が有意に減少していることを我々は発見した。この直接的利益は、多回交尾から得られる増加した刺激によっておそらく説明できるだろう。しかし、2頭のオスと1回ずつ交尾したメスにおける繁殖の成功と、単独のオスと2回交尾したメスにおける繁殖の成功の間に差はなかった。我々の研究は、多回交尾の直接的利益の重要性を支持している。我々の研究では、子供達の将来の生存と繁殖の成功において遺伝的利益が及ぼす影響を排除することができないが、我々はここで研究した特徴に対する一妻多夫の適応的利益を発見できなかった。

発表者:上垣