No.432-1(2007/6/21)

Egalitarian motives in humans

(ヒトにおける平等主義という動機)

Dawes CT, Fowler JH, Johnson T, McElreath R & Smirnov O (2007)
Nature, 446: 794-796.

実験ゲームの参加者は、しばしば自分がコストを負ってでも他者の所得を変更しようとし、この行動は協力行動の促進に影響を与える。しかし、このような行動がどんな動機から生まれているのかは不明である。協力の促進を目的とした罰や報酬は、所得を平等にしようとする試みと区別できない。そこで、自分がコストを負って取ったり与えたりする行動を理解するため、我々は新たに、平等主義という動機を切り離すことのできる実験ゲームをデザインした。その結果、協力行動が強化されない状況でも、ゲームの参加者は自分がコストを負って他者の所得を減らしたり増やしたりすることがわかった。さらに、所得変化の大きさや頻度は不平等性によって強く影響を受けた。最高所得者に対する感情は、所得格差が増大するほどネガティブなものになり、こうした感情を表現する参加者は、所得が平均以上の者の所得を減らし、所得が平均以下の者の所得を増やすために、より多くの所得を費やした。これらの結果は、平等主義という動機が、所得を変化させる行動に影響すること、よってこの動機は、強い互恵性、つまりヒトにみられる協力の進化の基盤を成す重要な要因であることを示唆している。

発表者:鳥山