No.434-1(2007/7/5)
Emergence of Novel Color Vision in Mice Engineered to Express a Human Cone Photopigment
(ヒトの錐体感光色素を発現させたマウスによる新しい色覚の獲得)
Jacobs GH, Williams GA, Cahill H & Nathans J (2007)
Science, 315: 1723-1725.新たな感覚受容能力の進化において感覚受容体タンパクをコードする遺伝子の変化は不可欠である。霊長類では、三色型色覚はX染色体上の感光色素遺伝子の変化を経て進化した。この過程を再現するため、X染色体上の多型の一つとしてヒトの長波長光感受性錐体(L錐体)を発現させたノックインマウスについて調べた。行動テストの結果、マウス由来の視物質とヒトのL視物質の両方を網膜に持つヘテロ接合体性のメスのマウスは、長波長光に対する感受性が増し、新たな色弁別能を獲得していることが明らかになった。感覚受容器に関わる遺伝子の変化だけによって新しい次元の感覚経験が生じるのは、哺乳類の視覚システムにおける生得的な可塑性によるのだと考えられる。
発表者:松野