No.438-1(2007/8/2)
Spontaneous altruism by chimpanzees and children
(チンパンジーとヒトの子どもにおける自発的な利他行動)
Warneken F, Hare B, Melis AP, Hanus D & Tomasello M (2007)
PloS Biology, 5(7): 1414-1420.人々は他人のために行動する。自分に対する直接的な利益なしに、自分たちのコストがかかっても、見知らぬ人に対してでもそれを行う。多くの研究者はそのような利他行動は種に特有な心理学から生じると主張し、現生のチンパンジーのようなヒトから最も近い進化の隣人には見られないと主張してきた。この考えを支持して、数少ないチンパンジーにおける利他行動の実験研究のほとんどは否定的な結果を示している。それに対して我々はチンパンジーが報酬なしに自発的に繰り返しヒトと同種他個体に対して援助の基本的な形を行う実験的証拠を報告する。2つの比較研究でsemi-free rangingのチンパンジーがヒト幼児と同じ頻度で見知らぬヒトを助けた。それは報酬とは関係がなく(実験1)、援助にかかるコストとも関係なかった(実験2)。三つめの研究ではチンパンジーが血縁関係のない同種他個体が食べ物を得るのを助けた。この新奇な状況では被験体は新しく獲得した技術を他個体のために使うことが必要とされた。これらの結果はチンパンジーが利他行動の重要な側面をヒトと共有していることを示し、ヒトの利他行動のルーツはこれまでの実験的証拠が示唆してきたよりも深いことが示唆された。
発表者:森本