No.693-2(2013/3/7)

The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet.

(イヌのゲノム上にある家畜化の痕跡はデンプンが豊富な食物への適応を示す)


Axelsson E, Ratnakumar A, Arendt M, Maqbool K, Webster MT, Perloski M, Liberg O, Arnemo JM, Hedhammar A & Lindblad-Toh K (in press)
Nature

 イヌの家畜化はヒトの文明の発達における重要な出来事であった。その出来事がいつ、どこで起こったかについては議論があり、古代のオオカミからイエイヌへの変化に伴って起こった遺伝的な変化についてはほとんど知られていない。我々は、イヌとオオカミの全ゲノム配列決定を行い、380万箇所の遺伝的変異を特定し、イヌの家畜化の際に選択の標的となったと思われる36のゲノム領域を特定した。これらのうち19領域は脳の機能に重要な遺伝子を含み、そのうち8遺伝子は神経系の発生経路に関わるもので、イヌの家畜化にとって重要な行動的変化の基盤となったと思われる。同時に、デンプンの消化と脂肪の代謝に関わる10遺伝子にも、選択の痕跡が見られた。それらの遺伝子における変異を特定し、その機能を調べたところ、イヌはオオカミに比べてデンプンの消化に優れていることが支持された。我々の結果は、イヌの祖先が、肉食よりもデンプンが豊富な食物に適応できるようになったことが、イヌの初期の家畜化における重要なステップであったことを示す。  発表者:堀