研究概要


ver.20140415

専門は比較認知科学。霊長類、ツパイ類、食肉類、齧歯類、鳥類を対象に、心の働きの比較研究をおこなっています。ヒトを含め、すべての動物の心はこの地球上に生命が誕生して以来、数十億年の進化のたまものであり、対等で、互いに敬意を払うべきものです。その多様な心を理解し、その進化のプロセスを、現存の種々の動物の知性や感情の働きを比較することで跡づけたい。それが研究のテーマです。

比較認知科学については、拙著『比較認知科学への招待−「こころ」の進化学』(ナカニシヤ出版、1998)、『動物たちのゆたかな心』(京都大学学術出版会、2007)、『比較行動学−ヒト観の再構築』(放送大学教育振興会、2011)をご覧ください。

これまでの主な研究としては、ニホンザルの同異(same/different)概念形成過程の分析、感覚性強化を用いたマカクザルの種の認知とその規定因に関する研究、遅延図形再構成によるチンパンジーの再生記憶に関する研究、ポンゾ錯視の知覚に関する種間比較、知覚的補間に関する比較研究、ランダムドットの系統的変化による境界知覚(spatio-temporal boundary formation)の比較研究、フサオマキザルの自発的欺き行動の実験的分析、フサオマキザルの道具使用行動に見られる因果理解に関する実験的分析、フサオマキザルのメタ記憶に関する実験的分析などが挙げられます。2008〜2012年度、京都大学文学研究科の板倉昭二教授、教育学研究科の明和政子准教授(現教授)、林原類人猿研究所の平田聡主席研究員(2013年9月より、京都大学野生動物研究センター教授)とともに、「意識・内省・読心−認知的メタプロセスの発生と機能」という科研費プロジェクトをおこないました。メタ認知の発生過程、及びそれと他者理解の関係を明らかにしようとするプロジェクトです。鳥類、齧歯類、食肉類(イヌ)、サル、類人、ヒト幼児を研究対象として大きな成果を挙げました。この流れの研究は現在も継続中です。

また、大学院生や外国人共同研究者などとともに、霊長類における生物的運動(biological motion)と顔図形の認識の発達、霊長類の多様な社会的知性、霊長類の協力行動と利他行動、霊長類の高次感情、ハトの心的表象操作過程、霊長類と鳥類の概念形成過程、ハムスターの空間表象、鳥類と霊長類の錯視知覚の比較、鳥類とツパイの図形認識、イヌの物理的・社会的知性、イヌと霊長類の感情認識、感情が知覚に及ぼす影響、エピソード記憶の種比較などの研究をおこなっています。ヒトと動物の関係に関する国際比較研究もおこなっています。野生動物研究センターの村山美穂教授と共同で、イヌとウマ及び霊長類の遺伝子と行動や性格との関係に関する研究も開始しました。ネコ研究も開始しました。