Differential effects of social and non-social reward on response inhibition in children and adolescents.
(子どもと青年における反応抑制に対する社会的及び非社会的報酬の異なる効果)
Kohls G, Peltzer J, Herpertz-Dahlmann B, & Konrad, K. (2009).
Developmental Science, 12, 614-625.



要約

臨床発達精神病理学の分野での重要な課題は、反応抑制などの認知的な制御処理が特に動機付けによって高められうるのかということであ る。非社会(即ち、金銭)及び社会(即ち、好意的な表情)的報酬は定型発達の子どもや青年の反応抑制の精度を異なって改善しうるのか を決定するために、「動機付け(incentive)」go/no-go課題を成功した抑制に対する報酬随伴性を追加して適用した。加えて、子どもの性格 特性(報酬追求や共感など)が金銭的・社会的報酬反応性に与える影響を8歳から12歳の65人の男児で検討した。全ての参加者は2度テスト を受けた。ベースラインでは、抑制制御は報酬無しに評価され、その後、参加者は擬似ランダムに4つの実験条件(1.社会的報酬のみ  2.金銭的報酬のみ 3.社会的・金銭的報酬の混合 4.報酬無しの再テスト)のどれか1つに割り当てられた。より大きな影響は金銭 的報酬によって見られたものの、社会的・非社会的報酬は共に課題の成績を有意に向上させた。金銭的報酬を使用したときのみではあった が、報酬追求スケールの得点が高い子どもほど、抑制制御の成績の向上が大きかった。加えて、共感能力と社会的報酬から受ける利益の間 の関連について有意な傾向が見られた。これらのデータは、社会的動機付けが金銭的動機付けと比べて、同じくらい強い強化価を持ってい ないことを示唆する。しかし、性格特性の違いがどの程度報酬の種類の違いにより子どもが利益を受けるかを決定しているようである。自 閉症を持つ方に見られると想定される社会的報酬への感受性の低下や注意欠陥・多動性障害(ADHD)を持つ子どもに見られる報酬追求行動の 制御障害に関する臨床的示唆を議論する。