A dissociation between linguistic and communicative abilities in the human brain
(ヒトの脳における言語能力とコミュニケーション能力の乖離)
Willems, R. M., de Boer, M., de Ruiter, J. P., Noordzij, M. L., Hagoort, P., & Toni, I. (2010).
Psychological Science, 21, 8-14.
要約
言語はコミュニケーションの有効な手段であるが、言語能力とコミュニケーション能力がお互い
どのように関係しているかはまだ明らかではない。ある研究者たちは、伝達メッセージの生成に
は視点取得(メンタライジング)が必要で、重要なことに、メンタライジングは言語に依存する
と主張してきた。我々は言語コミュニケーションパラダイムを用いて、直接的に、伝達行為の生
成がメンタライジングに依拠しているのかどうか、伝達メッセージの生成の脳内基盤(cerebral
bases)は言語変数に感受性のある皮質の部分とは異なっているのかどうかを検討した。我々は、
一貫してメンタライジングと関係するとされている脳領域である背内側前頭皮質(dorsomedial
prefrontal cortex)が、言語的な難易度とは関係なく、発話の伝達意図への感受性があること
を発見した。逆に、言語に関係すると知られている領域である左下前頭皮質 (left inferior
frontal cortex)は、発話の言語的な難易度への感受性はあったが、伝達意図への感受性はなか
った。これらの結果はコミュニケーション能力と言語能力は脳内で(また計算論的にも)異なっ
たメカニズムに拠っていることを示す。