Impaired theory of mind for moral judgment in high-functioning autismk


Moran, J. M., Young, L. L., Saxe, R., Lee, S. M., O'Young, D., Mavros, P. L., & Gabrieli, J. D.
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 108, 2688-2692.



要約

 高機能自閉症(ASD)には、社会的インタラクションにおいて実生活で困難があるという特徴を伴う。しかしながら、ASDを持つ人々は他者の信念や意図の理解を必要とする実験室でのテストは概ね成功する。この矛盾は、ASDを持つ成人に、心の理論の判断を引き出す実験課題ではまだ示されていない心の理論の障害があることを示唆する。我々は、ある人の行動の意図(心の理論に基づく)と結果両方を考慮する必要のある際に、ASDの成人が普通とは異なる道徳的判断を行うのかどうかを検証した。実験1では、ASDを持つ成人と健常者(neurotypical participants)が誤信念理解をテストするための心の理論課題を受けた。実験2では、同じASDを持つ成人と新たなグループの健常者が行動の道徳的許容度を2(意図: neutral/negative)×2(結果: neutral/negative)のデザインの課題において判断した。誤信念課題の成績においてグループの違いはなかったものの、道徳判断課題では、中立的な行動(neutral acts)、意図したが実行されなかった危害(attempted harms)、意図した危害 (intentional harms)では差はなく、意図しない危害(accidental harms)のみに差が見られた。意図しない危害を意図したが実行されなかった危害よりも道徳的に悪くないと判断した健常者とは異なり、ASDを持つ成人は、意図しない危害と意図したが実行されなかった危害が道徳的に異なるとは安定して判断しなかった。意図しない危害に関して、ASDを持つ成人は、ある人の悪気のない意図に関する情報について過小に信頼(underreliance)し、その直接的結果として、悪い行動の結果について過剰に信頼(overreliance)しているようであった。これらの知見は、道徳的判断のために心的状態の情報(例: 信念、意図)を統合する能力の障害を明らかにしている。