Relations between temperament and theory of mind development in the United States and China: Biological and behavioral correlates of preschoolers' false-belief understanding.
アメリカと中国の幼児における気質と心の理論の発達:就学前児の誤信念理解での生理指標と行動指標との相関



Lane, J D, Wellman, H. M., Olson, S. L., Miller, A. L., Wang, L., & Tardif, T. (2013)

Developmental Psychology, 49, 825-836


要約

情動反応性仮説(Emotional-reactivity hypothesis)によると、系統発生においては反応性が低い気質への選択は人間を含めたいくつの種の洗練した社会的認知スキルの発達を支持したという(Hare,2007)。人間の個体発生では、情動反応性仮説に基づき、反応性が低い子どもほど心の理論の発達が早いと予測されている。本研究では中国とアメリカの就学前児102名を対象に、彼らの気質と誤信念課題理解との関係を調べた。気質は保護者の評定とともに、子どもの生理的反応を測った(唾液コルチゾールによる視床下部-下垂体-副腎系活動性の測定)。結果として、攻撃性が強い幼児、内気であり生理的反応の活動性が高い幼児のほうが社会的認知力が低かったことが情動反応性仮説と一致した。しかし、両国においてほとんどの幼児の場合、高い生理的反応を示すほど、心の理論の発達が早いことから、生理的反応が社会的参与と社会的刺激に対する注意の高まりに効果的であると考えられ、情動反応性仮説への修正が促される。また、社会的インタラクションに消極的な気質を持つが活動性の低い幼児は、とくに中国の幼児において、心の理論がより発達したことが見られたため、社会的文化の文脈によっては、ある形式の社会的不参与も社会的認知の発達を促進する可能性が考えられる。