The Neurophysiology of Language Processing Shapes the Evolution of Grammar: Evidence from Case Marking.
言語処理の神経生理学が文法の進化を形作る:格標識からの証拠

Bickel, B., Witzlack-Makarevich, A., Choudhary, K. K., Schlesewsky, M., & Bornkessel-Schlesewsky, I. (2015).

PloS one, 10(8), e0132819.


要約

 脳における言語処理の原則は、文法の進化に影響を与えるのだろうか?あるいは、言語の変化は単なる社会−歴史的随伴性の問題なのだろうか?今まで報告されている証拠は曖昧であり、物議を醸すものであるが、我々は本研究によって、言語処理における神経生理学的制約を明らかにした。その制約は、「名詞句が格によってどのように標識づけられるか(英語におけるsheとherの対比のようなもの)」の進化に体系立てられた効果をもたらした。
 複数言語間の神経生理学的な実験では、言語処理中、参加者は、後に被動作主と解釈する必要がある文頭の基本型の名詞句であっても、始めは動作主と解釈することを明らかにした。我々はこの処理原則が、たいていの動作主に能格が付与され、かつそれが省略されることが多いために文頭の名詞句が被動作主となることが一般的なヒンディー語でも観測可能であることを示す。この知見は、上記原則が人種間で広く見られ、かつ特定の言語の構造的なアフォーダンスとは独立であることを示唆する。したがって、原則は基本形を被動作主ではなく動作主とみなす格標識システムを発達させ、維持させることを好んだ。我々は、この進化バイアスを言語接触によって生じる効果をコントロールした上で、世界中の600以上の言語における系統発生学的シグナルの統計解析によって確からしいものとした。
 我々の知見は、少なくとも1つの文法の格となる特徴が、社会-歴史的要因とは独立に、その進化を体系的に脳の神経生理学的条件に適応させていることを示唆する。このことは、文法の特定の特徴が我々の種の生物学的進化と緊密な相互作用の中でどのように発達したかを理解するための新たな道筋を開く。