Precursors to morality in development as a complex interplay between neural, socioenvironmental, and behavioral facets


Jason M. Cowell and Jean Decety (2015)

PNAS, 112( 41), 12657-12662


要約

 乳児の外見上は複雑な、第3者の、社会的評価の性質とその基盤に関する論争はまだ続けられている。理論的観点は、同じく現れた乳児の選好行動の豊かな解釈と貧しい解釈の間で揺れ動いている。乳幼児が社会的世界のコア・ナレッジに基づく道徳感覚(moral sense)を持っているという主張がある一方、社会的評価は本質的に階層的であり、注意分配や接近-回避などのような原始的で一般的な処理過程の統合の産物であるという主張もある。さらに、生物学的に前もって用意されているこのような心は、かなりの変化を含む社会的環境において互いに作用し、初期の社会的評価と行動に影響を与えると考えられる。本研究は脳波計測、眼球追跡、行動、社会的環境という密接に関連する多様なレベルの分析から乳幼児(n=73, 12-24mo)における道徳的な感受性の神経的基盤と前兆(precursor)を調べた。二つの課題でキャラクターたちが向社会的に、あるいは反社会的にやり取りする場面を参加児が見ている間、参加児のEEGとERPと凝視(gaze fixation)を測定した。全参加児は向社会的やり取りと反社会的やり取りを見る際に、EEG power密度とERPにおいて神経的差異を現した。ERPでの差は向社会的キャラクターに対する参加児の選好を予測し、正義と公平感に対する親の評価により影響を受けた。まとめると、本研究は注意と接近-回避などの一般的処理での基盤を含む道徳的認知の基本的な性質に新しい説明を提供した。また、初期変化に関する妥当なメカニズムと発達社会神経科学の領域での前進に対する出発点を提示する。