幼児期における他者の意図理解と社会的問題解決能力の発達:
「心の理論」との関連から
鈴木亜由美・子安増生・安寧 (2004)
発達心理学研究,15,292-301


要約

本研究では、幼児の社会的問題解決の能力を「心の理論」の発達との 関連から検討した。3・4・5歳児を対象に、仮想的な対人葛藤場面に おいて、相手の意図(故意・偶然)を理解しているか、また葛藤を解決 するためにどのような方法を用いるかたずねた。同時に、誤信念課題に よって「心の理論」の発達を調べた。その結果、相手の意図の理解は 誤信念課題の正誤と関連していることが示された。また、「心の理論」 を獲得した子どもは、相手の意図(故意・偶然)に応じて異なる葛藤解決 方法を選択するであろうという仮説に反して、そのような区別は見られず、 相手の意図に関わらず、攻撃的方法の選択が減少し、自己抑制的方法の 選択が増加することが示された。これらの結果により、対人葛藤場面に おける相手の意図の理解は、「心の理論」と密接に関連しているが、 意図の違いによって葛藤解決方法に区別が見られるというわけではなく、 むしろ状況に関わらず一貫した解決方法を選択するようになる、という ことが示された。