Evolutionary psychology of spatial representations in Hominidae
(Hominidaeにおける空間表象の進化心理学)
Haun DBM, Call J, Janzen G, & Levinson S. (2006).
Current Biology, 16, 1736-1740.



要約

ヒトの認知に備わっている、霊長類として受け継いできたバックグランド、つまり、ヒトの認知の“ワイルド・タイプ”とでもいうべきものについては、それほど知見が多い訳ではない。しかしながら、ヒトの認知能力とその性向の進化を、ヒトに最も近縁な種のスキル(チンパンジーだけではなく、すべての現生の類人猿)と対比することによってたどることは可能である。そうすることによって、おそらく共通の祖先から受け継いだであろうものが示されるのである。ヒト乳幼児の初期の認知発達を見ることによって、我々またヒトという種に生来備わっている認知的バイアスに関する見識を得ることができる。本研究では、空間記憶、これは中心的な認知領域であるが、そこに焦点を当てた。最初に、すべての類人猿とヒト1歳児が、空間記憶のための方略として、形態的特徴よりも場所のほうを好んで使用することを示す。これは、すべての類人猿とヒトに共通の祖先が同じ選好を持つことを示す。そこで、次に3歳児を対象にテストをしてみると、この選好が逆転することがわかった。すなわち、ヒトと他の類人猿の間の連続性は、個体発生の初期段階にマスクされていることがわかる。このような発見は、系統発生的および個体発生的な対比によるものであるが、認知的選好の分岐に基づいたシステマティックな進化心理学に見通しをつけるものである。