上野 美果 さん

タイトル:
乳児における公平感の検討―社会的評価との関係―


要旨

 社会生活を営む上で,他者を評価する能力は必要不可欠であり,我々は他者の行為から意図を読み取り,誰が自分にとって友好的で,誰が敵か,また誰が社会的パートナーとして適切で,誰がそうでないかを判断している (Hamlin, Wynn, & Bloom, 2007) 。社会的評価の発達について,Hamlin et al. (2007) は言語獲得前の乳児でも,第三者に対する援助・妨害行動に基づいて社会的な評価を行うことができることを示した。社会的評価に影響を与える他者の行為として,援助・妨害行動 (Hamlin et al., 2007) の他にも,他者に対する資源の分配行動が挙げられる。先行研究では,生後2年目の乳児でも資源の分配場面において公平な分配を予測し (Schmid & Sommerville, 2011; Sloane, Baillargeon, & Premack, 2012) ,また不公平な分配を行う者よりも公平な分配を行う者の方が好ましいと評価する (Geraci & Surian, 2011) ことがわかっている。ただし,これらの結果だけでは,乳児が公平・不公平な分配に対して,社会的な善悪判断を行っているとは言い切れない。本発表では,生後15ヵ月の乳児を対象に,乳児が公平・不公平な分配に対して社会的な評価を行っているのかを検討した研究について紹介したい。