No.1043-2(2021/1/28)

Comparative analyses of the Pan lineage reveal selection on gene pathways associated with diet and sociality in bonobos

(Pan属の系統の比較分析によって、ボノボでは食性と社会性に関連する遺伝子経路が選択を受けたことが明らかになった)


Kovalaskas S, Rilling JK, & Lindo J (in press)
Genes, Brain and Behavior 

 チンパンジー(Pan triglodytes)とボノボ(Pan paniscus)は、およそ170万年前に異なる種に分岐した。分岐の際、現在のボノボ集団の祖先は、コンゴ川によって隔てられた。この地理的な障壁によって現在の2種は隔てられており、それに関連した生態学的要因(資源の分配や採餌競争など)によって、両種の異なる社会行動が形成されたと考えられている。最も大きな行動的差異は、集団間でのインタラクションである。チンパンジーは見知らぬ同種他個体に対して攻撃的に振る舞うが、ボノボは著しい寛容さを示す。2種の間の異なる社会行動様式がどのようにして生じたのかについてはいくつかの仮説がある。その中には、遺伝的な予測を伴い、ボノボの進化を家畜化の過程になぞらえるものもある。本研究では、73頭の類人のゲノムに、ハプロタイプホモ接合度と対立遺伝子頻度分化法を適用して、ボノボがPan属の共通祖先から分岐してから正の選択を受けてきた領域を特定し、現在見られる行動の差異をもたらした環境と過程をより理解することを目的とした。我々は、デンプンの代謝(AMY2)に関わる遺伝領域が選択を受けたという証拠を示す。これは、自己家畜化がボノボにおいて起こったとする予想を支持するものである。また、オキシトシン、セロトニン、ゴナドトロピン放出ホルモンの経路を含む、社会的行動に関わる神経内分泌経路が選択を受けたという証拠も示す。    発表者:堀