No.297-1(2004/06/03)
Monkeys reject unequal pay
(サルは不平等な報酬を拒否する)
Brosnan SF & de Waal FBM (2003)
Nature, 425: 297-299協力行動の進化において、自分自身の努力とそれに対する報酬を他個体のそれと比較することは重要であったかもしれない。それが予想通りにいかなかった場合にはネガティブな反応が起こるかも知れない。不公平さへの反感が、合理的選択モデルの範囲内で、ヒトの協力行動を説明しうるという理論があるが、実際にこの理論はこれまでの説明よりも包括的なものであるかも知れない。当然、そこにはかなりの文化差はあるだろうが、この「公正感」(sense of fairness)というものはおそらくヒトに普遍的で、様々な状況において優勢なものであろう。しかしながら、我々が、協力行動を取る唯一の動物というわけではない。それゆえ、不公平さへの反感というものは、ヒトに特有なものではないかも知れない。高等な協力行動を取るヒト以外の種の多くは、協力行動の成果と資源の分配に関する予想に導かれているように思われる。我々は、ヒト以外の霊長類であるフサオマキザル(Cebus apella)が、ヒトの実験者との交換における報酬の不公平な分配に対して、ネガティブな反応をみせたことを示す。彼らは、同種の他個体が自分と同じだけの努力に対してより魅力的な報酬をもらうということを知っていた場合には参加を拒否した。その効果は、他個体が何の努力もせずにそのような報酬を得た場合には増幅してみられた。このような反応は、不公平さへの反感の初期の進化的起源を裏付けるものである。
発表者:鳥山