No.402-2(2006/10/26)

Apes know that hidden objects can affect the orientation of other objects.

(大型類人猿は、隠された物体が他の物体の向きに影響を与えることを知っている)

Call J.(in press)
Cognition, .

ボノボ4個体、ゴリラ7個体、オラウンターン6個体が、台の上に2枚の小さな長方形の板を呈示された。1方の板の下には食物片が置かれていたため、板が傾いていたが、他方の板は台の上に水平に置かれていた。被験体は傾斜した板を選好した。別の実験では、まず2枚の傾いた板が被験体に呈示され、次に1枚の板だけが台の上に落とされて水平になり、他方の1枚は傾斜したままであった。被験体は、やはり傾斜したままの板を選好した。続く2つの実験で、この課題におけるかれらの論理的推論の限界となっている可能性のあるいくつかの点が検討された。1方が被験体から見えるように木片で支えられている、2枚の傾斜した板を呈示されると、かれらは木片で支えられておらず、報酬だけによって傾いているほうの板を選択することはできなかった。別の実験では、(通例とは異なり)1試行において2つの報酬が呈示され、組み合わせは 大きいバナナ"小さいニンジン・小さいバナナ"大きいニンジンの2通りであった。テストの前に実験者は両方の報酬を被験体に呈示し、その後それぞれを板の下に隠した。2枚の板は、下にある報酬の大きさに応じてそれぞれ異なった角度だけ傾いた。被験体は傾斜の大きい板のほうを選好し(大きい方の報酬を得ることができ)たが、食物の種類は無視した。すなわち被験体は、報酬が板によって隠されていないときには選択が逆転するにもかかわらず、大きいニンジンを小さいバナナよりも選好する頻度が高かった。被験体に板の下に隠されている報酬の種類を思い出させる手がかり(reminder)を与えても、結果が変わることはなかった。種々の実験を通して、学習の効果を示す証拠はなく、統制テストによって、実験者による不注意な手がかりや、動機づけの欠如による遂行の悪さ、傾斜した平面をもつ物体を選好する傾向に起因する遂行の良さ、があった可能性は排除された。被験体は板の傾斜している理由に関して何らかの推論をしており、傾斜した向きと報酬の存在とを単純に連合させているだけではないことが結論づけられた。

発表者:宮田