No.418-1(2007/3/8)

Planning for the future by western scrub-jays.

(アメリカカケスの将来計画)

Raby CR, Alexis DM, Dickinson A & Clayton NS.(2007)
Nature ,445, 919-921.

未来を知り未来に向けて計画することは複雑な技能で、多くの人々はヒト特有だと考えている。われわれはそれを備えて生まれてくるわけではない。子どもは2歳頃に未来の感覚を持つようになり、4〜5歳になってようやくある程度の計画能力を持つようになる。ビショフ−ケーラーの仮説によれば、ヒトだけが自身を現在の動機づけから切り離し、将来の需要に備えることができるとされており、他の動物種は将来の需要を予測することはできず、将来に向けた行動をするとすれば、それは固定行為型か現在の動機づけ状態に手がかりが存在するものであるとされている。本実験は、カラス科の1種、アメリカカケス(Aphelocoma californica)が将来の計画を立てるかどうかを調べるものである。われわれの示すとおり、カケスは将来の需要を見越して準備する。翌朝に空腹になることを学んだ場所に好んで食物を貯蔵し、翌朝手に入らないタイプの食物をより多く貯蔵するのである。これまでの研究で、ラットとハトは将来をコード化する課題を解決できる場合もあることが示されているが、それは極めて短い時間に限られ、ビショフ−ケーラー仮説に合致する結果が得られてきた。霊長類やカラス科の鳥類では、将来の結果に基づいて現在の行為を変えることができるが、将来の動機づけ状態によって行為の選択を変えるわけではないし、また当該の予測的行為の集中的な訓練なしにはできない。本実験の結果は、カケスが、現在の動機づけ状態とは無関係に、自発的に将来に向けて計画することを示すものであり、これがヒト特有の能力であるという見方に疑問を投げかけるものである。

発表者:藤田