No.419-1(2007/3/15)
Understanding visual access in common marmosets, Callithrix jacchus: perspective taking or behaviour reading?
(マーモセットの視覚的アクセスの理解:視点取得か行動の読み取りか?)
Burkart JD & Heschl A.(2007)
Animal Behaviour , 73, 457-469.一連の実験でコモンマーモセットの視覚的アクセス(visual access)の理解を調べた。チンパンジーの実験で考案された食物競合パラダイム(food competition paradigm)を用いた実験1で,マーモセットが同種から見えるものと見えないものを知っているかどうかを調べた。劣位のマーモセットは,優位の競合者にも見える食べ物ではなく,自分にしか見えない食べ物を一貫して選んでいた。これは,単純な視覚的アクセスの心的理解(レベル1の視点取得)を示す。マーモセットが手掛かりとして視線を利用する能力を持つことに基づいて,実験2では実験1の妥当性を検証した。マーモセットは正確に視線を推定していたにも関わらず,この課題で視覚的アクセスの理解をマーモセットがしているという証拠は得られなかった。実験3で,実験1の結果を別のメカニズムで説明できるかどうかを検証した。その結果は,他個体に見られたものはその個体のものとして扱い,その対象を避ける傾向をマーモセットが持つことを示唆した。マーモセットは視線の方向の正確な推定に熟達していることを示したが,一貫し,かつ,場面独立的な視点取得能力を示すことができなかった。他の霊長類の結果,および,より広範な進化的視点と絡めて,これらの結果と人の洗練された視線の理解の出現に関して考察した。
発表者:高橋