No.530-1(2009/07/23)

Understanding why patients with schizophrenia do not perceive the hollow-mask illusion using dynamic causal modelling.

(統合失調症患者がホロウマスク錯視を知覚しない理由をdynamic causal modellingを用いて調べる)

Dima D, Roiser JP, Dietrich DE, Bonnemann C, Lanfermann H, Emrich HM & Dillo W (2009)
NeuroImage, 46: 1180-1186.

 統合失調症患者は様々な錯視の影響を受けにくい。例えば、健常な参加者は、おそらく制約的なトップダウンの影響が強力であるために、窪んだ仮面を普通の顔として知覚するが、統合失調症患者はこの錯視を知覚しない。しかしながら、この効果を支える神経メカニズムに関してはほとんど解明されていない。われわれは、機能的磁気共鳴画像法を用いて、統合失調症患者と健常統制群におけるホロウマスク錯視を調べた。本研究の第一の目的は、dynamic causal modelling(DCM)で示される効果的結合という指標を用いて、統合失調症患者と統制群の間のトップダウン処理およびボトムアップ処理の影響の差に関連すると考えられる、両群間でのホロウマスク錯視の知覚とそれに関連する神経応答の違いを説明することであった。この説明に一致して、両群間で効果的結合に差がみられた。具体的には、統合失調症患者では「窪んだ」顔の呈示時にボトムアップ処理が強まり、トップダウン処理が弱まった。これに対して、統制群では同じ刺激を知覚する際に、トップダウン処理が強まった。これらの知見は、統合失調症患者は知覚の際、刺激駆動処理に依存しており、入力された感覚データが過去経験により蓄積された情報を必要とする生成的モデルを参照して制約をうける、概念駆動のトップダウン方略をあまり用いることができないことを示唆している。

発表者:酒井