No.553-2(2010/2/4)
The Ebbinghaus illusion deceives adults but not young children.
(大人はエビングハウス錯視を知覚するが児童は知覚しない)
Doherty MJ, Campbell NM, Tsuji H, & Phillips WA (in press)
Developmental Science.周囲刺激に対する大きさ知覚の精度は、「行為のための視覚」と「知覚のための視覚」との区別をするため、また知覚における文化的・精神病理学的・発達的差異を研究するために用いられてきた。しかしそれらについての議論は未だ決着がついていない。本研究において私達は、厳密なエビングハウス錯視の二重解離課題を用い、7歳未満の子供はそれ以上の年齢層よりも周囲刺激の大きさの影響を受けないことを発見した。児童の解答は、文脈が正答を助ける時大人よりも不正確で、文脈が正答を阻害する時大人よりも正確であった。10歳までは文脈への敏感性は大人の水準に達しなかった。したがって、エビングハウス錯視において見られる大きさの対比は、「知覚のための視覚」を司る腹側経路の生得的な特性によるものではなく、後天的発達によって生じる現象であり、また、自閉症患者におけるエビングハウス錯視に対する低い感受性は、その病症による直接的なものではない。私達の発見はまた、西洋文化の大人は東アジアの大人と比べれば文脈依存性が低いが子供と比較すれば高い文脈依存性を持つことを示す。まとめると、これらの発見は発達とともにより広い範囲の文脈情報の統合が段階的に起こることを明らかにするものである。このような発達は有益ではあるが、その代償として文脈が判断を誤らせるようなものの場合大人はなんと子供よりも世界を不正確に見るのである。
発表者:渡辺