No.569-2(2010/6/17)
Wild genius-domestic fool? Spatial learning abilities of wild and domestic guinea pigs
(野生は天才、家畜はおバカ?―テンジクネズミの野生種と家畜種における空間学習能力)
Lewejohann L, Pickel T, Sachser N & Kaiser S (2010)
Frontiers in Zoology , 7; 9背景:家畜動物とその野生近縁種は幅広い面で異なっている。モルモット(Cavia aperea f. porcellus)の家畜化は少なくとも4500年前に始まり、野生の近縁種であるケイビー(Cavia aperea)との間に解剖、生理、行動の変化をもたらした。モルモットは実験動物として広く用いられているにもかかわらず、その学習、記憶能力はしばしば非常に乏しいとして軽視されている。ケイビーの学習と記憶についてはほとんど知られていない。家畜における大きな特徴は、相対的な脳のサイズの減少である。モルモットにおいては、脳のサイズが13%減少している。しかしながら、家畜化の過程における脳のサイズの減少によって、学習能力が落ちるという通説は、あまり検証されていない。実際、家畜動物はヒトが作った環境に適応することによって、野生の近縁種の能力を上回ることさえあるかもしれない。本研究で、我々はテンジクネズミの野生種と家畜種における空間学習能力を比較した。我々は、家畜化の影響により、2種の学習成績は異なると予測した。従って、空間学習能力を調べるために、35〜45日齢の雌雄のケイビーとモルモットを、モリス水迷路を用いてテストした。結果:ケイビーもモルモットも課題を学習することができ、水迷路がケイビーにとっても適切なテストであることがわかった。学習速度に関しては、雌雄のモルモットが、ケイビーを有意に上回った。面白いことに、モルモットのみがプラットフォームの位置の有意な空間的連合を示した。一方、ケイビーは他の効率的な探索方略を使用していた。結論:本結果は、空間学習能力のテストにおいては、モルモットはケイビーに全く劣っていないことを示している。逆も正しいかもしれない。従って、人為選択と交配は認知の低下を引き起こしたのではなく、課題をより効率的に解けるようになるような、ヒトが作った環境への適応をもたらしたのかもしれない。 発表者:堀