No.882-1(2017/3/9)

Global map of oxytocin/vasopressin-like neuropeptide signalling in insects.

(昆虫におけるオキシトシン/バソプレシン様神経ペプチド情報伝達のグローバルマップ)


Liutkeviciute, Z., Koehbach, J., Eder, T., Gil-Mansilla, E., & Gruber, C. W. (2016).
Scientific Reports, 6: 39177.

オキシトシンとバソプレシンは、浸透圧調節、繁殖、社会行動、記憶と学習などに重要な、様々な生理学的機能を調節する。この情報伝達システムの起源は、6億年前にさかのぼると考えられている。オキシトシン/バソプレシン様のペプチドは、複数の無脊椎動物の種で同定されており、動物界全体に渡って機能的に関連しているようである。昆虫における、このペプチドとGタンパク結合型受容体による情報伝達システムの生物学に関する情報はほとんどない。近年、200を超える昆虫のゲノムやトランスクリプトームのデータセットが発表され、昆虫におけるオキシトシン/バソプレシンの相同分子であるイノトシンと、その受容体の分子構造および系統発生的分布の分析ができるようになった。この情報伝達システムは、初期の節足動物と、初期に分岐したいくつかの系統の代表的な種に存在していた。しかしながら、トビケラ目、チョウ目、ノミ目、シリアゲムシ目、ハエ目にはイノトシン遺伝子が存在しなかった。これは、ペプチド‐受容体システムが、2億8千万年前の共通祖先において失われた可能性を示している。加えて我々は、カメムシ目(コナジラミ、カイガラムシ、アブラムシ)では、いくつかの種にイノトシン情報伝達システムが存在しないことと、クモ類(鋏角亜門)には全く存在しないことを発見した。神経内分泌ホルモンの進化パターンと配列の多様性に関する、このユニークな知見によって、動物の中で最も大きなグループの1つにおける、イノトシン情報伝達システムの生理学を解明する機会が得られるであろう。 発表者:堀