No.963-1(2018/12/13)

Nonverbal working memory for novel images in rhesus monkeys.

(アカゲザルにおける新奇な刺激に対する非言語的なワーキングメモリ)


Brady RJ & Hampton RR. (in press).
Current Biology.

 ヒトのワーキングメモリは言語表象によって大いに促進される。例えば、新奇な刺激に対して言語的なリハーサルや言語的な記銘を行う。ヒト以外の動物は言語を持たないが、どの程度ヒトと似たメカニズムを有しているのかはわからない。非常にfamiliarな刺激を用いてテストすると、サルはワーキングメモリ内でリハーサルのような能動的な維持をする強い証拠がみられるが、新奇な刺激を使用した時にはみられない。これらの結果は、ワーキングメモリは既に記銘された表象に頼っていることが示唆される。このような違いは、言語を持たないために、サルは新奇刺激を能動的に保持できないからなのかもしれない。もしくは、新奇刺激に対するワーキングメモリは存在するが、先行研究では行動としてみられていないだけなのかもしれない。新奇刺激を用いた課題では、ターゲット刺激が妨害刺激と比較して高いfamiliarityを有する。このような違いから、ワーキングメモリを反映していない課題成績になってしまっている可能性がある。本研究では、新奇な刺激において、相対的なfamiliarityを手掛かりに再認テストをすることを防ぐ課題を考案した。新奇な刺激において、認知負荷やdelayによって記憶が損なわれることを確認した。これは、能動的なワーキングメモリ内での情報の保持を示唆する。サルのワーキングメモリで見られたこの柔軟性は、サルにおいてもワーキングメモリを促進させてunfamiliarな刺激を記銘しているかもしれないことを示唆する。また、言語を用いたヒトのワーキングメモリと非言語的なサルのワーキングメモリという新しい一致性を確立した。   発表者:高木