No.965-1(2018/12/27)
Linking cognition with fitness in a wild primate: fitness correlates of problem-solving performance and spatial learning ability.
(野生霊長類で認知と適応度を結びつける:問題解決および空間学習能力との相関)
Huebner F, Fichtel C & Kappeler PM. (2018).
Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 373(1756), 20170295.
野生動物の認知成績と適応度を結びつけることは、認知の個体差を形づくる進化プロセスを理解するために極めて重要である。しかし、複数の認知成績指標と適応度の代理指標の間で異なる関係性を明らかにした研究はほとんどない。こうした研究にさらなる比較データを提供するため、我々は野生のハイイロネズミキツネザルを対象に、問題解決および空間学習能力における個体成績と身体状態(BMI)および生存日数との関連性を検証した。これら4つの指標は、いずれも大きな個体間変動を示した。問題解決課題における効率性は、過酷な乾季を過ぎた身体状態の変化の大きさを予測した(空間学習成績は予測せず)。これは、新たに発見した運動技術を素早く応用する能力が、自然下における新たな食物源の開拓をも促進する可能性を示唆している。しかしながら、生存日数はどちらの課題とも関連しなかった。これは、ネズミキツネザルの生存が、今回問題にした認知成績には依存しない可能性を示唆している。我々の研究は、野生の霊長類において認知と適応度(の代理指標)の関連を最初に見出したものである。考察では、野外研究で意味のある認知と適応度指標を選択する際に、種の生活史や生態を考慮に入れることの重要性と課題を強調する。 発表者:別役