No.968-1(2019/1/31)

Genomic imprinting is implicated in the psychology of music.

(音楽心理学におけるゲノムインプリンティングの可能性)


Mehr SA, Kotler J, Howard RM, Haig D & Krasnow M. (2017).
Psychological Science, 28(10): 1455-1467.

 ヒトはなぜ赤ちゃんに歌いかけるのか?ヒト乳児は比較的に早熟な状態で生まれ,親からの注意が生存に必要である。対乳児歌いかけは親の注意のシグナルとする働きを持つかもしれない。PWS症候群という極まれに見られるゲノムインプリンティング異常においては,15番染色体q11-q13遺伝子の父親由来非表現によって,子が母親からの注意に対する希求が大きく減少する。我々はPWS症候群の患者の音楽に対する異常な反応を報告した。PWS患者の被験者 (N=39) は典型発達の成人や子供 (N=589) に比べ,音楽聴取時に身体の動きと,音楽聴取による心拍の減少がより多かったことと,ピッチ弁別能力の低下を見せた。PWS患者において表現されなかった,父親由来表現型遺伝子15q11-q13が音楽に対する希求と音楽への知覚的敏感性を高めるかもしれない。以上の結果は音楽心理学におけるゲノムインプリンティングの可能性が示唆され,音楽進化史の理論構築に貢献できるであろう。   発表者:周