No.973-1(2019/3/7)

Olfactory discrimination between litter mates by mothers and alien adult cats: lump or split?

(母ネコと余所の大人ネコによる同腹仔のにおいの弁別:まとめたがり屋か分けたがり屋か?)


Jacinto E, Szenczi P, Hudson R & Bánszegi O. (2019).
Animal Cognition, 22:61-69..

 母ネコは自分の仔ネコと余所の仔ネコの体のにおいを弁別できる。本研究では、同腹仔ネコのにおいの弁別もできるのか調べた。生後1週齢と7週齢の雌雄両方の仔ネコのにおいを刺激とし、馴化─脱馴化法を用いて3つの実験を行った。実験1で、同じ個体のにおいを3回呈示した(馴化試行)後、異なる個体のにおいを呈示した(脱馴化試行)ところ、仔ネコの性別が異なっていても、また、どちらの週齢においても、母ネコが自身の仔ネコのにおいを弁別できるという証拠は得られなかった。実験2では、余所の大人ネコはオスもメスも7週齢の同腹仔ネコの嗅ぎ分けはできたが、1週齢ではできなかった。実験3では、実験2と同様、7週齢では母ネコは余所の知らない仔ネコのにおいを嗅ぎ分けることができた。本研究から、同腹仔ネコは、大人ネコが弁別可能な個体ごとのにおいを持っており、それが発達するには時間がかかり、少なくとも離乳前には発達せず、自身の母親には嗅ぎ分けられないと結論付けられる。母親は同腹仔ネコ全員に共通する巣の、または、同腹のにおいを学習し、それを知覚し反応している、もしくは、個体ごとのにおいを「自分の子」というカテゴリーに分類していると考えられる。母親が自分の子のにおいの嗅ぎ分けはできないのに、余所の子ではできることは、母ネコの認知的分離能力や、そのようなにおいに対して異なった反応をする能力に、異なるレベルの嗅覚情報処理過程が存在することを示唆する。   発表者:千々岩