No.975-2(2019/3/28)

Risso's dolphins plan foraging dives.

(ハナゴンドウは採餌潜水を計画する)


Arranz P, Benoit-Bird KJ, Southall BL, Calambokidis J, Friedlaender AS & Tyack PL.(2018).
Journal of Experimental Biology, 221(4): jeb165209.

 ヒトは過去を記憶し、その情報を将来の行為の計画に用いている。実験室実験では、食物の場所の記憶のテスト等で動物が将来の要求を予期してふるまう能力を持つことが示されているが、野生下で採餌する動物で検証した例は少ない。呼吸を止めて潜水する動物(※水棲哺乳類)では、品質・場所・予測可能性が様々な獲物を採餌するため、限られた酸素供給量の制約の中で潜水行動を調整する必要がある。我々は、こうした動物において計画能力は重要かつ一般的であろうと仮説を立てた。我々は、ハナゴンドウに音と動きを記録するタグを装備した。外から観察可能なエコーロケーションを通して、彼らが注意をどこに向けるのか、また観察or予測された獲物の分布に応じて彼らが探索方略をどう調整するのかを検証した。観察個体からの情報は、無人潜水機上の音響測深機から得られる獲物のデータと統合された。潜水の開始時、ハナゴンドウは特定の深度での採餌を示唆するかのようにエコーロケーションの探査範囲を調整した。獲物の豊富な層に入ると、彼らは探査範囲を層内のパッチの規模に合うように縮小した。上昇すると探査範囲は拡大した。これは、彼らがその層内での採餌を止めることを決め、より浅い層で獲物を探索し始めたことを示している。潜水を通じて学習した獲物に関する情報は、次の潜水における採餌の計画に用いられていた。我々の結果は、過去の潜水から得られた獲物のマルチモーダルな情報(音響的・視覚的・捕獲)に基づく空間的な記憶によって、将来の潜水の計画が調整されることを例証する。   発表者:別役