No.976-1(2019/4/04)
Wolves lead and dogs follow, but they both cooperate with humans.
(オオカミは先導し、イヌは追従する。しかし、どちらもヒトと協力する)
Range, F., Marshall-Pescini, S., Kratz, C., & Viranyi, Z. (2019)
Scientific Reports, 9: 3796.
収斂進化によって、イヌは寛容さや協力性といったヒトの社会的スキルの進化の良いモデルになったことが示唆されてきた。しかしながら、近年の研究でオオカミ(イヌに最も近い野生近縁種)はイヌに比べてより同種他個体に対して寛容で協力的であることが明らかになった。それでも、家畜化の際の選択によってヒトに対する協力的な傾向が強まった可能性はあり、ヒトとの協力についてはイヌの方がオオカミより優れているとも予測される。この仮説を検証するために、我々は、同じようにヒトに育てられたイヌとオオカミを、なじみのあるヒトパートナーと協力して紐を引く課題を用いて比較した。イヌもオオカミもヒトと協力して成功できたたため、イヌとヒトとの協力は、オオカミの社会的スキルをもとにして進化したことが示唆される。しかしながら、どのようにヒトと協力するかについては、オオカミとイヌで違いが見られた。オオカミはヒトとのインタラクションを導くような動きを始める傾向があった。一方、イヌはヒトが動きを始めるのを待ってから追従する傾向があった。これより、我々はイヌの家畜化の過程において、はじめにヒトへの恐怖が減少したのち、より従順な傾向が選択されたと提案する(慇懃行動仮説)。それは、資源をめぐる衝突を最小限にとどめ、ヒトが導きイヌが追従するという形の安全な共存、協働を保証するためのものであったと考えられる。 発表者:堀