No.980-1(2019/5/9)

Spontaneous memory retrieval varies based on familiarity with a spatial context.

(自発的な記憶想起は空間的文脈の親近性にもとづいて変動する)


Robin, J., Garzon, L., & Moscovitch, M. (2019)
Cognition, 190, 81-92.

  空間的文脈は、エピソード記憶にとって強力な手がかりとなりうる。日常生活において、我々は様々な親近性をもつ場所に遭遇するが、それらは異なる形の記憶想起を誘発するかもしれない。これまでの自伝的記憶研究では親近性の高いランドマークほどより詳細な記憶を呼び起こすことが示唆されてきた一方、手がかり過負荷説のような理論では、親近性の低い手がかりの方が特定の記憶の想起をより確実に誘発すると予測されている。したがって、親近性のより高い/より低い手がかりが、それぞれより一般的な記憶と特異的な記憶を別々に引き出す可能性がある。我々は今回の一連の研究において、親近性の異なる現実の空間的文脈に基づいて自発的な記憶想起を引き出すための新たなパラダイムを開発した。結果、より親近性の高い(身近な)文脈は意味的・一般的な記憶の自発的想起の割合を高めたが、エピソード記憶は親近性の低い(なじみの薄い)手がかりでより頻繁に想起された。これらの結果のパターンは、関連性の高い記憶が時間経過とともにより一般的な表象を形成する一方、関連性の低い記憶はエピソード記憶的なままで保たれる、ということを示している。我々は今回の結果を、参加者に思考を想起するよう指示する、という別の方法で得られた結果とあわせて議論する。これらの発見は、日常的な自伝的記憶パラダイムにおける文脈の親近性と記憶想起のダイナミクスに対して新たな洞察を提供する。   発表者:別役