Foundations for self and others : a study in autism
Hobson R.P. & Meyer J.A.
Developmental science (2005) 8, 6, 481-491

要約

幼児が自分自身と他者が別個のものでありながら連結性のある個人、つまりそれぞれが世界に対して心的視点を持った存在であることを体験するための基盤や、自閉症がそのような体験を欠損しているという性質について議論がなされてきた。今回、私たちは、生活年令(だいたい6〜16歳)や言語性知能MA(およそ2歳半〜14歳)、つまり知能指数を一致させた統制群を用いて、自閉症児と非自閉症児が自他のつながり(共感性:自分を他者と同一だとみなすようになること)をどのように形成するのかについて検討した。われわれは、2種類の新奇のステッカーテストを用いて、子どもが相手に相手の体のどこにステッカーを貼り付けるべきかを伝える状況を設定した。実験1において、非自閉症児は、少なくとも一回は自分の体を指し示した。しかし、自閉症群の半分は、たとえ他の方法でうまくどこにステッカーを貼るかを伝えられたとしても、自分自身を指差すことで相手にステッカーの位置を伝えることは全くしなかった。実験2においてスクリーンを用いて実験者の体を隠し、実験者が参加児とコミュニケーションを取りながら自分自身を指差してみせると、相手に伝えようとして自分自身に向かって身振りをする行動において両群にもっとも大きな違いが見られた。つまり、自閉症児は身体を通した他者の心理的、伝達的態度を身につけることが、相対的に欠損しているということを意味すると考えられる。われわれは、このような共感の過程が自他関係においては不可欠であり、また幼児が心の理解を発達させる基盤となると考えている。