山本 寛樹(教務補佐員)
タイトル 親子の視線コミュニケーションの発達:
母親視点からの縦断的分析
要旨
アイコンタクトは原初的な母子間コミュニケーションの一形態である。これまで、乳児に宛てたアイコンタクトが乳児の認知処理や社会学習に与える影響について、モニターベースの実験室研究で多くの知見が蓄積されてきた。一方で、方法論上の制約ゆえに、母子が自由に動けるような場面でアイコンタクトが生じる状況の特徴や、その発達変化に関する基本的な知見は少ない。発達初期の視線交渉は後の社会的認知能力と関連することからも、日常的な母子間の視線交渉の特徴・長期的変化に関する生態学的記述は重要である。本研究では、母親にメガネ型視線計測装置を装着することによって5組の親子の日常的な視線交渉を縦断的に記録し、「相互注視における、乳児に宛てたアイコンタクトの割合」に影響を与える要因を検討した。乳児の月齢に伴い、親から乳児に宛てたアイコンタクトの割合は減少していた。また、視線交渉時の母子間距離が大きいほど、乳児から親に宛てたアイコンタクトの割合が増加しており、この傾向は乳児の歩行獲得後に強くなっていた。本研究は、母子間の「見る−見られる関係」を母子間距離が調節していること、乳児の視線交渉への動機づけが月齢に伴って発達することを示す。 |