Spontaneous number
representation in semi-free-ranging rhesus monkeys
(semi-free-rangingのアカゲザルにおける自発的な数の表象)
by Hauser, M. C., Carely, S. & Hauser, L. B.
Proc. R. Soc. Lond. 2000, B. 267, 829-833
動物が数に関するかなりの能力を持っていることはこれまでの研究でも示されてきた。けれどもこうした研究は、少数のcaptiveな被験体を、比較的人工的なテスト手続きでもって膨大な訓練をおこなった実験に基づいたものであった。われわれは、200頭を越えるsemi-free-rangingのアカゲザルを対象として、訓練をしない、しかも自然な採食場面を模した課題を使っておこなった実験の結果を紹介する。被験体は、2人の実験者が、2つの不透明な箱それぞれに、リンゴ片を入れる場面を観察した。それから実験者は、被験体が箱に近づけるように、その場を歩き去った。サルは、リンゴのスライスが、1対2、2対3、3対4、そして3対5のときはより大きな数のリンゴスライスが入っている箱を選択した。しかしながら、4対5、4対6、4対8、3対8のときには大きい数の方の箱を選択するのに失敗した。統制条件での実験では、箱の選択が、リンゴスライスを箱に入れるのに要した時間の総和や箱の中のリンゴの量ではなく、数の表象に基づいたものであることを確認した。3より大きな数のリンゴスライスになると失敗したが、これは訓練が施されもっとずっとすぐれた数の(表象)能力を示した他の動物での実験とは極めて対照的であった。このような自発的(に生成する)数の課題でアカゲザルが到達できた数のレンジは、ヒトの乳児により到達されたの数のレンジにマッチしており、また自然言語の文法においてエンコードされるレンジに対応している。
(板倉)