The role of animacy in children's understanding of 'move'.
( 幼児の'move'という動詞の理解におけるanimacyの役割)
Gelman, S., & Koenig, M. A.
Journal of Child Language, 2001, 28, 683-701.動物は自分自身の行為における因果性の原因(行為主体)になりうるという特性をもつが(例;イヌは自発的に動く),人工物はそうではない(例;マーブルは自分では動かない).この研究では,このようなanimacy(生物性)とagency(行為主体性)の間の概念的つながりが,英語を話す幼児が'move'という語を解釈する際に用いられるのかについて検証した.特に著者らは,幼児の'move'についての意味的解釈が,その主語が動物であるか,無生物であるかによって変化すると仮定した.幼児は,主語が無生物のときには受身的に解釈し('the marble moved'は'the marble was moved by someone else'を意味する),主語が生物のときにはそのようには解釈しないと予想した('the dog moved'は'the dog was moved by someone else'とは解釈されない).人間が生物および無生物を移動させる映像を刺激として用いたふたつの調査を行った.被験者は,3歳児65名,5歳児57名と74名の大人であった.被験児には,それぞれの刺激事象について,動物および物体が動いているか否か(→動かされているか否か)の判断が求められた.今回の手続きでは,'yes'という反応は主語が受身的であるとみとめたことを意味する(例;'the dog/marble moved'は'the dog/marble was moved by someone else'を意味する).5歳児と大人においては,主語が動物のときよりもおもちゃのときのほうが「動かされている」という報告が多かった.しかしながら,3歳児においてはこのようなanimacyに基づく反応は見られなかった.言葉におけるanimacyとagencyのリンクは3歳から5歳の間に形成されると考えられる.これらの結果は,幼児の言語使用において大人と同様の概念的制約が働いていること,そして/または,幼児が,入力された言語における,言語形式と意味をリンクさせる情報の統計的な分布(の頻度)に敏感であることを示唆するものである.
(小杉)