No.193-1(2002/2/14)

Effects of experience and social context on prospective caching strategies by scrub jays.

( アメリカカケスの予見的餌貯蔵戦略に及ぼす経験と社会的文脈の効果)

Emery, N. J., & Clayton, N. S.
Nature, 2001, 414, 443-446.

社会的生活には食物などの資源をめぐる競争というコストがある。食物貯蔵には、手早く食物を集めてよそに隠すことによって、この競争を緩和する働きがある。しかしながら、貯蔵した食物が誰かに盗まれる可能性もあるから、これは危険な戦略である。アメリカカケス(Aphelocoma coerulescens)は、食物を貯蔵するときに、「何を」「どこに」「いつ」隠したか憶えている。他のカラス科の鳥と同じように、彼らは同種の他個体が隠した場所を憶えており、機会があればそれを盗むのだが、盗まれる危険を最小限にするために自身の貯蔵戦略を調整している可能性もある。これを確認するために、アメリカカケスに、他の鳥からは見えないようにしてひとりで貯蔵させる場面と、別の1個体が見ている場面と出食物を隠させ、後にひとりで取り出させた。他の鳥の食物を盗んだ経験を持つ鳥は、取り出し試行の時に、食物を他の場所に移し替えた。これは隠すところを他の鳥に見られていたときだけ起こった。盗んだ経験のない鳥は、隠すところを見られていてもそのような行動はしなかった。この結果は、アメリカカケスが盗みをしたという自身の過去経験から得た情報を、将来他の鳥に盗まれる可能性に関連づけ、それに従って自身の貯蔵戦略を変えるということを示唆している。

(藤田)