Social discrimination in lamb: persistence and scope.
(子羊における社会的弁別:その持続性と範囲)
Ligout, S., Porter, R. H.,& Bon, R.
Applied Animal Behaviour Science, 2002, 76, 239-248.一連の実験により、既知の血縁関係にはない子羊間の社会的な認識を調べた。子羊と彼らの母親は1週間小グループで飼育された(Original-group :O群) 。その後、残りの実験の間は、新しいグループ(Recent-group:R群)で飼育された。実験1では、子羊はO群にいた既知個体と一緒にされたときのほうが、その個体とは5日間分離されていたにもかかわらず、未知個体と一緒にされたときよりも不安声を上げることが少なかった。数時間後に繰り返しテストしたところ、この効果は現れなかった。これは、被験体が実験手続きに慣れてしまったことを示唆している。2日後に、実験2として被験体にO群とR群からの子羊を対呈示し、どちらの子羊を選択するかについて実験を行った。その結果、被験体はどちらの子羊に対しても選好を示さなかった。しかし、追加の2選択テスト(実験3)として、未知の子羊とR群の子羊を対呈示した場合には、被験体はR群からの既知個体を選好した。つまり、今回の結果は子羊が一緒に育った子羊と、未知個体とは弁別することができるような関係を築くことができるということを示唆している。そして、少なくとも数日間続く隔離期間の間社会的な弁別が持続することが示された。しかし、それぞれの同種個体自体について個別に認識しているのか、既知・未知といったような、高次な社会的概念の区別をしているのかについてははっきりしない。社会的弁別は、その対象の遠近によって、感覚様相の異なる組み合わせによってなされているのかもしれない。
(足立)