No.39-1(1998/08/26)

Prehension movements and perceived object depth structure.
(捕捉動作と対象の3次元構造の知覚)

Castiello, U., Bonfiglioli, C., & Bennett, K.
Perception & Psychophysics, 1998, 60, 662-672.

この研究で考察するのは「2次元の物体として知覚されたものに対する運動のパターンは、同じものが3次元の物体として知覚される場合と異なるだろうか」という問題である。被験者は2次元あるいは3次元に見えるリンゴに手を伸ばし掴むことを要求された。2種類の実験条件が設定され、条件Aでは、リンゴは初め2次元として知覚されるが、20%の試行において運動の開始と同時に見えが3次元になる。条件Bでは、最初に3次元であり20%の試行において突然に2次元のシルエットに変化した。コントロール条件では、被験者は2次元に見えたリンゴをディスクであるかのようにつかんだ(82%)が、3次元のリンゴはふつうのリンゴとして手全体で握った(86%)。条件Aのテスト試行では2次元の対象への反応(precision grip)から3次元に対する手全体での反応への急速な変化が見られた。逆の変化に対しては、逆の結果が見られた。条件Aでは変化があった場合に加速度のピークが早くなったが、条件Bではそのような違いはなかった。これらの結果は、対象と関わる際にわれわれの使用する運動パターンは、実時間におけるその対象の知覚の様相に強く影響を受けるということを示唆し、例えば次元性というような物体のアフォーダンスがあらかじめ存在する対象の表象より優先されるということを示唆している。

(山下)