No.41-2(1998/09/09)

Experimental evidence for spatial memory in foraging wild capuchin monkeys, Cebus apella.
(採食遊動中の野生フサオマキザルにおける空間的記憶についての実験的証拠)

Janson C. H. (State University of New York)
Animal Behaviour, 1998, 55, 1229-1243.

野生動物では、自然食物資源の空間的記憶に関して説得力のある証拠を得ることは難しい、なぜなら、利用可能な資源について、観察者が対象の動物と同程度に知ることはまずないし、新しい食物資源を探知する動物の能力は、通常計測されないからである。本研究では、亜熱帯の冬におこる自然食物資源の不足を利用し、(それぞれ)約200m離して設置され、大規模に配置された15個の餌台を、ブラウンオマキザルの野生群に導入した。この配置によって、この動物たちに利用された主要な果実供給源の位置、生産性、および更新スケジュールを制御することができた。餌台の探知可能範囲の独立な計測値と、既知の餌台の位置を組み合わせることで、「ランダムな」採食遊動の様々なモデルから期待される餌台間の群れの移動パターンを計算した。これらの期待されたパターンを、群れの実際の空間移動と比較した。オマキザルの群れは、観察された探知可能範囲である82mを用いると、いずれのランダム探知モデルから期待される動きに比べても、有意に高頻度で近い方の餌台へ移動し、有意に直線的に移動したが、彼らの行動は、225-350mという非現実的に大きい探知可能範囲を用いたランダムモデルとは一致した。私は本研究群の移動様式は、空間的記憶によって導かれていた可能性が高いと推測する。しかしながら、採食遊動者の資源の探知可能範囲が分かるまでは、直線的移動及び近い餌台への移動傾向は一般的には空間的記憶の説得力のある証拠とはならない。

(山越)