本研究では、自己理解が他者理解のための前提であるという仮説に立ち、意識や内省と呼ばれる自身の心の内部への能動的アクセス(認知的メタプロセス)の発生過程を、非言語的手法を用いて、広範な種比較と発達比較により実証的に検討し、それを通じて、読心あるいは心の理論などと呼ばれる他者理解のメカニズムを明らかにする。具体的には、メタ記憶(記憶に関する記憶)と情報希求行動、確信度の認知とリスク選択、エピソード記憶と未来計画、感情の認知と制御、共感と他者理解などの諸機能を、ヒト、ヒト以外の霊長類、食肉類、有蹄類、齧歯類、鳥類を用いて、行動実験と行動観察から分析し、可能な限り直接比較する。ヒト及びヒト以外の霊長類の一部については、可能な限り発達比較をおこなう。近年、こうしたメタプロセスを実現するために言語は必要条件ではないこと、思いのほか多様な生活体にそれは存在しているらしいことが散発的に示されている。しかし組織的な種比較や発達比較はいまだおこなわれていない。本研究は、ヒトとは何かを理解する上で不可欠と考えられる認知的メタプロセスの発生を、初めて総合的かつ体系的に明らかにしようとする試みである。
本研究により、認知的メタプロセスの進化と発達の過程が明らかにされ、それを通じて他者理解の諸側面に必要なメタプロセスが同定されることが期待される。メタプロセス研究の方法論の確立は、その神経科学的基礎解明への重要な1ステップとなる。また多様な生活体にメタプロセスが存在していることが例証されれば、それは人間観、乳児観、動物観の革新につながり、多様な生命への敬意、地球共生系の意識を高め、地球化時代の未来への提言にも結びつく。さらに、他者理解に必要な下位能力としてのメタプロセスが同定されれば、それは他者理解に障害を抱える人々への支援や、読心の可能なロボットの開発等にも応用が可能であろう。
年度 | 直接経費 | 間接経費 | 合計 |
2008年度 | 39,300 | 11,790 | 51,090 |
2009年度 | 25,700 | 7,710 | 33,410 |
2010年度 | 25,700 | 7,710 | 33,410 |
2011年度 | 25,700 | 7,710 | 33,410 |
2012年度 | 26,900 | 8,070 | 34,970 |
合計 | 143,300 | 42,990 | 186,290 |
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