No.122-2(2000/7/6)

Does learning affect the structure of vocalizations in chimpanzees?
(学習はチンパンジーの発声構造に影響を及ぼすか?)

by Marchall, A. J., Wrangham, R. W. and Arcadi, A. C.
Animal Behaviour, 1999, 58, 825-830.

Lion Country Safari and North Carolina Zoological Park(USA)において2つの施設で飼育されているオスのチンパンジー(Pan troglodytes)から、'Pant-hoot'の発声を記録した。発声の継時パターンに、2グループ間で重要な違いがあることが音響分析により明らかになった。各々のグループ内のオスは多様な起源をもつので、Pant-hootの群内類似性が発声者の遺伝的類似性に由来していたはずはない。さらに、飼育環境にも目立った違いはないので、それが群間差異をもたらしたとは考えにくい。そうではなく、それぞれのグループの発声法は発声学習の結果としてある構造に収束したと、結果は示唆している。飼育グループの発声構造における群内変動は、ウガンダの野生チンパンジー(Kanyawara study group, Kibale National Park)で見出されたそれと類似していた。このことはPant-hootが種特異的制約をもつということを示唆し、群内ではさまざまな個体群が地域変異に収束しえると示している。付け加えて、ある一頭のオスによりLion Country Safariコロニーに持ち込まれた音響的に新奇なPant-hoot変異が、同コロニー内の他の5頭のオスに広がった。このことは、チンパンジーもまた学習により鳴き声の周波数パラメータを調整できるかもしれないと示唆している。

(徳久)