No.139-1(2000/11/16)

Quality, quantity, distribution and audience effects on food calling in cotton-top tamarins.
(ワタボウシタマリンのフードコールと食物の質、量、位置、聴衆効果)

Roush, R. S. & Snowdon, C. T.
Ethology, 2000, 106, 673-690.

採食中に特異的に現われる音声については、多くの動物種で知られているが、その音声を引き出す要因については、まだよくわかっていない。その要因について、ワタボウシタマリン(Sabuinus oedipus)の採食にまつわる音声を実験的に探った。最初の実験では、フードコールと、食物の質、量、位置、そして個体が属するグループの社会的構成との関係を調べた。子供のいない成体のペアでは、未成体の個体や、子供を持つ成体よりも、音声が頻発した。また、食物の質や位置に応じて、音声の生起頻度は変化しなかったが、中庸に好まれ消費が一番早かったモモがあるときに、一番多くの音声を発した。また、グループの他個体との距離が近接しているときにも多くの音声を発していた。攻撃行動は少なかったが、容器が2つではなく1つのときに現われた。成体間に一貫した優劣関係を見出せなかったが、親子のグループでは攻撃高度は未成体の個体に向けられた。2番目の実験では、グループの他個体から見える場所、あるいは見えない場所のそれぞれで、食物を提示した。すると、他個体から見えようと見えまいと、タマリンは同じ頻度で音声を発し、聴衆の有無が発声に関与しないことが示された。また、食物を提示されていない個体も、食物や食物と一緒にいる個体が見えようと見えなかろうと関係なく、フードコールに対し同じように音声を生起させた。食物がないところではフードコールがほとんど生起しないので、食物を見ていないタマリンのフードコールは、他個体から食物に関する表象的な情報を与えられたことを示す。

(石川)