Food-related bray calls in wild bottlenose dolphins (Tursiops
truncatus)
(野生ハンドウイルカにおける採餌に関係したいななき声)
V. M. Janik.
Proceedings of the Royal Society of London, 2000, vseries B, 267, 923-927.
鯨類を野外で研究するのは難しいため、彼らが自然環境下でどのように音声を使っているのかはあまりわかっていない。ここ数年で発達してきた、受動的音源定位システム(passive acoustic localization systems)によって、彼らの海水面での行動と、個体ごとのコミュニケーション行動を関連付けする事が可能になった。このシステムを使って、スコットランドのモーレイ湾に棲息するハンドウイルカが、サケ科の魚を採餌する時に明らかに関係している低い周波数のいななき声(bray calls)を発している事を報告する。この音声が発せられると、この周辺にいる同種個体が迅速に集まってくる。採餌の道具として音声を使用する動物では、同種を引きつける機能として進化したフードコールと、副産物として結果的に同種を引きつけてしまう、餌を操作したり探索したりするコールとを区別する事は難しい。しかしこのハンドウイルカのいななきの低い周波数の構造から、このいななき声は同種を引きつける為ではなく、餌を操作する機能の為に進化してきたことを示している。この結果から、餌を捕らえやすくするような、餌の知覚システムを利用している事がうかがえる。