No.158-1(2001/4/26)

Intentional behaviour in dog-human communication: an experimental analysis of "showing" behaviour in the dog.


(イヌとヒトとのコミュニケーションにおける故意的な行動:イヌにおける「見せる」という行動の実験的分析)

Miklosi, A', Polgardi,R., Topal, J. & Casnyi, V.  
Animal Cognition, 2000, 3, 159-166

 近年の懐疑論説にも関わらず、現在多くの動物種において、故意的、あるいは機能的参照つきのコミュニケーションの単純な形態の証拠がある。そこで我々は、イヌが彼らの主人と機能的参照つきのコミュニケーションを行うかどうかを調べた。「見せること」とは、外部の標的に関連した直接的な要素と、注意を得る要素(つまり情報の送り手あるいは受け手に知覚した人の注意をむける要素)の2つの要素からなるコミュニケーティブな行動と定義した。我々の実験状況でイヌは、餌(あるいはおもちゃ)を直接とることはできないが、隠される場面を目撃した。我々は彼らの主人がいるとき、イヌは「見せる」行動をとるかどうかを調べた。イヌの行動に対する、主人と食べ物の両方の動機付け効果を制御するために、餌(あるいはおもちゃ)だけ、あるいは主人がいるだけの状況で、統制された観察も行った。餌(おもちゃ)と主人の両方へのイヌの視線の頻度は、それらの一方があるときに多かった。つまりイヌは、餌(おもちゃ)がある時により高い頻度で主人をみ、主人がいる時により高い頻度で餌(おもちゃ)のある場所を見た。餌(おもちゃ)と主人の両方がいるときには、新しい行動「見返し」がおこった。これは2秒間以内に、視線の方向を餌(おもちゃ)から主人に返す行動と定義した。この期間に起こった音声は、いつも主人、あるいは餌の位置に対する視線と関連していた。この状況において特別であったこの行動も、チンパンジー、ゴリラやヒトにおいて記述されている、そしてしばしば機能的参照つきのコミュニケーションの形式として説明されている。我々の観察に基づいて、我々は、イヌも機能的参照つきコミュニケーションを主人と行うことが出来るかもしれない、そして彼らの行動は「見せる」という形で記述できるだろうことを議論した。イヌにおいて、よいコミュニケーション技術の発達のために、飼いならすことと個別学習することの寄与が議論された。そしてこれらは今後の研究の対象となるだろう。

(黒島)