No.162-2(2001/5/31)

Individual recognition by use of odours in golden hamsters: the nature of individual representations.

(ゴールデンハムスターにおける匂いによる個体認識:個体表象の性質)

Johnston, R. E. & Bullock, T. A.
Animal Behaviour, 2001, 61, 545-557

 個体認識に関しては多く知られているが、個々の動物が有する他個体表象についてはほとんど知られていない。そこで、馴化―弁別手続きを用いてゴールデンハムスターのこの認識の性質について調べた。まずオスハムスターを2頭のメスハムスターに馴知させ、その後どちらか一方のメスの匂い(膣分泌液、脇腹腺、尿、耳のうち一つ)に対し馴化させ、同一個体の別の匂いに般化がみられるかがテストされた。このうち3つの匂い(膣分泌液、脇腹腺、耳)間では般化がみられた。この効果は、オスが匂いの提供元であるメス自身に馴知していないときにはみられなかった。以上から、オスが、2つの匂いが同じ意味を持っているので、同一メス個体の2つの匂い間で般化を示したことがわかった。この結果はオスが、統合された、種々の要素からなるメス表象というものを形成していたことを示す。追加実験で、ある個体のホームケージでその匂いだけに馴知させても効果はなかったことから、この般化には個体間の相互作用が必要だとわかった。また、匂い刺激として尿が使われたときには、例え尿が個体識別に有効な要素であっても、匂い間での般化は起こらなかった。この理由としては、この種にとってコミュニケーションの手段として使うには、尿は水消費の選択のためにコストが高すぎるということが考えられる。

(岩田)