No.164-1(2001/6/14)

The concepts of 'sameness' and 'difference' in an insect.    

(昆虫における同・異概念の形成)

Giurfa, M., Zhang, S., Jenett, A., Menzel, R. & Srinivasan, M. V.
Nature, 2001, 410, 930-933.

 昆虫は、情報を柔軟に処理したり学習することで環境に適応している。ミツバチ(Apis mellifera)は、従来から学習・記憶研究のモデル生物となっており、行動・細胞および分子レヴェルから研究されている。初期の研究では、匂いによる条件づけ(口吻伸長反応)やオペラント条件づけ(視覚刺激)によって促される、初歩的な連合・非連合学習の様式(elementary associative and non-associative forms of learning)に注目してきた。しかし、これまでの研究によって、ミツバチは脊椎動物しか持っていないと考えられていた(より高度な)認知能力をもつことが指摘されている。例えば、視覚情報の補間、連合想起(associative recall)、視覚情報の類別、そして文脈情報(contextual information)の学習が出来る。我々は本論文で、ミツバチが同・異の概念を形成していることを示す。ミツバチは、遅延見本合わせ(delayed matching to sample:見本刺激と同じ刺激を選択する)および遅延非見本合わせ(delayed non-matching to sample:見本刺激と異なる刺激を選択する)課題を学習し、学習したルール(同じ刺激を選ぶor異なる刺激を選ぶ)を、同じモダリティーの新しい刺激を用いた課題に対しても、更には、異なるモダリティー刺激を用いた課題に対しても適用できた。従って、ミツバチは、特定の対象とその物理的なパラメーターを学習できるばかりではなく、「同じ」や「異なる」という、相互関係の抽象化が出来るのだと考えられる。

(渡部)