No.174-1(2001/9/20)

Rhesus monkeys know when they remember.

(アカゲザルは憶えている時を知っている)

Hampton, R. R.
Proceedings of the National Academy of Sciences, 2001, 98(9), 5359-5362.

ヒトの記憶には、意識的に気づいており(consciously aware of)言語的に報告できるものと、行動には影響するものの意識には上らないものがある。記憶アクセス上のこうした顕著な違いは、ヒトの記憶系を分類するうえで中心的な性質だが、動物の研究ではこれまで実証困難であったことから、記憶にはヒト特有のものがあるかもしれないと考えられてきた。今回私は、アカゲザルが記憶の存在/不在を報告できることを示す。言語を持たない動物において、主観的で意識的な記憶特性を確証することはおそらく不可能だろうが、今回の結果はヒトの意識的記憶と重要な機能的類似性を持ったものが動物にもあることを客観的に示すものである。もし動物が記憶の存在/不在を認識できるなら、憶えていなければ記憶テストを受けないで済ませられるようにすれば成績が向上し、また実験的に記憶の減衰を大きくすれば記憶テストを拒否することが多くなるはずである。2頭のサルのうち1個体はすべてのテストにおいて問題なくこれらの基準を満たした。もう1頭のサルは1つの場合を除いて基準を満たした。多様な環境的・行動的刺激が"手がかり"となっている可能性を排除するためにプローブテストをおこなったが、記憶の不在を検出すること自体が、忘れたときには記憶テストを拒否するサルの能力を裏付けるもっとも可能性の高いメカニズムであることが示された。
(藤田)