No.190-2(2002/1/24)

Acquisition of navigation by chimpanzees (Pan troglodytes) in an automated fingermaze task.

( 自動操作指迷路課題におけるチンパンジーのナヴィゲーションの獲得)

Iversen,T.H. & Matsuzawa,T.
Animal Cognition, 2001. 4. 179-192.
チンパンジーがタッチモニタ上に提示された視覚的指迷路課題をどう学習するのかを調べた。目的は、複数の迷路解決課題を訓練することによって、新奇迷路を初回提示時において正確に解決できるような、一般化された地図読みスキルが形成されるかを測定することであった。実験1ではcaptiveな2頭の大人のメスチンパンジーに、モニタ上の視覚的なオブジェクト(球)に一本の指で触れ、迷路状の障害物のグリッドの中をターゲットまで動かすよう訓練した。課題は、各試行における動きのパスの貯蔵で全てオートマ化されていた。訓練は一つの障害物からなる単純な迷路から複数の障害物からなる複雑な迷路へと進んでいった。被験体は、障害物や行き止まりを避けた道筋でターゲットまでボールを動かすことを学習した。いくつかの迷路の訓練後、両被験体は一番短い道筋に非常に近い道筋でボールをターゲットまで動かすという効率のよい反応を形成した。その後より一般化された迷路解決反応を獲得しているかを調べるために新奇迷路を提示した。被験体は初回提示で新奇迷路の65-100%を、ボールを障害物を周って行き止まりに入らずにターゲットまで動かすことで解決できた。実験2では、1頭をターゲットまで2通りのルートがある迷路で訓練した。ルートのうち1つは、多数の位置のうち1箇所でブロックされた。異なる迷路において行き止まりを避けることを訓練した後、同様に一方のルートがブロックされた新奇迷路を提示した。被験体は新奇迷路の90.7%を解決できた。迷路内に大きく開いた短いルートと長いルートがある場合には、短いルートが好まれた。短ルートがブロックされると、短ルートへの偏好によって53.3%しか解決できなかった。今回の結果から、被験体は特定の迷路を学習する際に試行錯誤を用いていることが示唆された。両被験体ともに多くの新奇迷路を解決できていたにもかかわらず、一般化された「地図読み」スキルは完全には形成されなかった。
(岩田)